一本の線
- Seigen

- 2 日前
- 読了時間: 1分

ふと師匠が口にしていた言葉を
思い出すことがあります。
「線は点の連続なんだよ」
当時の私は、
書の技術についてのお話として聞いていました。
同じ言葉も最近は少し違った響きで
心に返ってきます。
一本の線を書いているつもりでも、
筆先が触れているのはいつも一点だけです。
前の点はすでに過ぎ去り、
次の点はまだ訪れていません。
あるのは、いま筆先が置かれている、
この一点だけです。
その一点が次の一点へ移り、
また次へ移っていく。
そうして振り返ると、
そこに一本の線が生まれています。
庭の木々を眺めていても、
同じようなことを思います。
昨日と今日で大きく違うわけではありません。
けれど、毎日見ているはずなのに、
ある日ふと気づくのです。
葉の色が深くなっていることに。
季節が歩みを進めていることに。
変化というものは、いつも気がつかないほど
小さなものなのかもしれません。
書もまた、その繰り返しです。
一本の線を引き、
また一画を書く。
その積み重ねが、一字となり、
一幅となります。
目の前の一点を重ねていく。
ただそれだけのことが、
やがて一本の線となるように。



コメント